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トコジラミについて
トコジラミは、別名ナンキンムシとも呼ばれ、カメムシ目に属する昆虫です。吸血性の昆虫で、近年、都市部や地方の観光地を中心に日本各地で発生し問題となっています。
トコジラミによる主な被害
(1)人への直接被害
人に対する一番の被害は吸血刺咬による「かゆみ」です。刺咬箇所は皮膚を露出させている足や腕、首、腹部などで多く見られます。
・感染症について
吸血昆虫のため、蚊のように感染症の媒介が懸念されますが、現在のところ感染させた例は報じられていません。
(2)経済的な被害
トコジラミが商業施設や宿泊施設等で発生すると、駆除が完全に終了するまでにしばらくの間、店舗やフロアーを営業停止にしなければならない場合が出てきます。また、風評被害も発生しやすくなります。
トコジラミ(ナンキンムシ)の生態
(卵):大きさ1mm程の乳白色で、家具の隙間など表面がざらざらしたような箇所に産み付けられます。
(幼虫):ふ化幼虫は1~2mm程と非常に小さく、色も薄い褐色なので、室内では見つけにくいことがあります。
トコジラミは脱皮を繰り返し、5齢を経て成虫になります。
(成虫):トコジラミ成虫は体長5~8mm程で、体は円盤状の平ら、体色は赤っぽい茶色をしています。口は細長い針状で吸血に適した形になっています。
動きは敏捷ですばやく歩き回ります。成虫になっても翅は生えないので、飛ぶことはできません。
(食性):幼虫・成虫ともに人や動物(哺乳動物・鳥類)から吸血します。主に夜間に徘徊して吸血しますが、条件によっては昼間でも吸血することがあります。
(生活史):トコジラミの雌成虫は1日に2~5粒の卵を隙間に産み付けます。
卵は6日前後(温度によって異なる)でかえり、幼虫はすぐに吸血を開始します。
幼虫は1~3ヶ月の期間を経て成虫になります。成虫の寿命は長く、室温条件(18~20℃)下で1年近く生きることがあります。
また、冬季の低温時期は飢餓に対する抵抗力が大きく、13℃下では約1年間 飢餓に耐えるという報告があります。
トコジラミ(ナンキンムシ)の生息場所
トコジラミは暗くて狭い隙間を好んで潜伏します。
(主な潜伏場所)
柱や床板、壁面、壁紙の裂け目、ベッドやタンスなど家具の隙間・継ぎ目、布団などの寝具類や衣類、畳の継ぎ目、壁紙や書籍、書棚の隙間、カーテンの裏・カーテンレールの隙間、額縁・壁時計の裏などあらゆる家具・建物の隙間を利用して集団で生息します。
生息数が増えると排泄物の糞が多数付着し、黒褐色に汚れていきます。この血糞跡が駆除するにあたり、生息場所を探すための調査ポイントになります。
スーパー ナンキンムシ
近年発生しているトコジラミは、ピレスロイド系の殺虫剤に強い個体が確認されております。
一般に市販されている“スプレー殺虫剤”や“くん煙剤”にはこのピレスロイド系殺虫剤が使用されているものが多く、室内で発生したトコジラミが薬剤に強い系統であった場合、これら殺虫剤では十分な効果が出ないことがあります。
万が一、トコジラミの生息が確認された場合は、すみやかに害虫駆除業者に相談されることをおすすめします。
トコジラミ(ナンキンムシ)の発生経路・原因
トコジラミは主に人や物と一緒に運ばれて、持ち込まれます。
海外からの旅行客や荷物などと一緒に国外から入ってくるだけでなく、
- トコジラミが発生している国内の施設を利用した場合、その利用者の衣服やカバンなどにトコジラミが紛れ込んでいて、そのまま自宅へ持ち帰ったり、
- 自宅に発生したトコジラミを住人が知らずに他へ持ち運んだり、
- トコジラミの付いている家具とは知らずに再利用する、
など様々なケースがあります。
トコジラミは吸血源があれば容易に住み着くため、発生場所が「不衛生」や「清潔にしているから大丈夫」といったこととは関係ありません。
トコジラミ駆除と対策
トコジラミの防除について
トコジラミ防除の方法は (1)殺虫剤による駆除,(2)加熱による駆除,(3)物理的に防除するなど、様々な方法があります。防除する場所・対象物によって、方法を組み合わせます。
(1)殺虫剤による駆除
トコジラミを薬剤で駆除する場合、(A)直接吹き付けて駆除する方法(直接噴霧)と,(B)生息している/していそうな場所へ噴霧し、触れさせて駆除する方法(残留噴霧・待ち伏せ処理)があります。
(A)直接噴霧 ・・・エアゾールタイプの殺虫剤が便利です。
(B)残留噴霧 ・・・残効性・殺虫効果のある殺虫剤を散布する必要があります。
現在のところ、残留噴霧には業務用液体殺虫剤(トコジラミ用/有機リン系剤など)が有効ですが、専用薬剤の散布は害虫駆除業者にご相談ください。
【殺虫剤処理場所 例】
トコジラミはあらゆる隙間に潜伏します。糞(血糞)の付着・黒ずんた汚れがあれば潜伏している可能性があるため、そこにはしっかり薬剤処理してください。
「和室」では畳をあげ、縁などを中心にトコジラミを調査。生息していれば、床板へも薬剤処理。畳の下への処理は粉剤も有効です。
【家具・寝具などへの処理】
布団やマットレス、ソファなど人の肌が直接触れる物へは殺虫剤の散布はあまり好ましくありません。そのため、掃除機による吸引が最も安全で効果的となります。
ただ、家具にトコジラミが大量発生している場合は廃棄処分することもおすすめします。
<掃除機による駆除>
※卵は掃除機で吸い取りにくいため、卵を潰すくらい擦り付けて吸引してください。
※吸い取ったゴミは、ゴミパック内にトコジラミがいるため、廃棄する際はビニール袋に入れて口をしっかり閉めて処分してください。
※使った掃除にトコジラミが付いていないか、注意してから元に戻してください。
(2)加熱による駆除
(A)スチームによる駆除
油汚れなどを落とすスチームクリーナーの熱でトコジラミを駆除します。特にマットレスやベッドの周囲、床、ソファーなどの隙間にあてて、加熱殺虫してください。
※ニスや艶のある樹脂でコーティングしたものは曇ることがあります。
※高温や高湿度に弱い家具・電化製品へはスチーム処理しないでください。
※熱の到達が不十分だと、致死しない場合があります。
(B)熱湯による洗濯、熱風乾燥機
トコジラミが付いている可能性のある衣類は、熱湯で洗濯すると有効です(79℃のお湯に5分間)。もしくは熱風乾燥機なら79 ℃、 5分以上を加熱してください。
※熱に弱い素材への加熱はご遠慮ください。
(3)物理的に防除
(A)寝具(マットレス)内への侵入防止
人が睡眠するベッドの周囲はトコジラミの格好の潜伏場所であり、また、睡眠中は最も人が刺されやすい時になります。
最近では、目の非常に細かいカバーで、マットレスやボックススプリングなど寝具を包む方法があります。マットレス内へのトコジラミの侵入防止や、すでにマットレスに入り込んだトコジラミを外に出さないようにさせます。
(B)ベッドへの侵入防止
ベッドの足はトコジラミが床から登ってくる通り道になります。トコジラミがベッドに這い上がってくるのを防止する資材として、ベッド足元4本に敷く容器型トラップなどがアメリカなどでは利用されます。
●生息調査
トコジラミ駆除をした後は、駆除効果が出ているか確認する必要があります。
方法としては、目視による確認や刺咬被害の有無、またトラップを用いた方法などがあります。
トコジラミ用の調査トラップの1つとして、写真のような透明樹脂ケース式の粘着トラップがあります。
ケースが透明のため、トコジラミの捕獲状況が一目で分かります。
※引用・参考資料:トコジラミ技術資料集、(社)日本ペストコントロール協会